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新茶2020

増田伊之助茶園茶葉研究所では、2020年の新茶の茶摘みが例年より3日も早く、しかも品質の良いものが多く収穫出来ました。こんなに良い条件が揃ったことは、私の父が茶業を始めてから「未だかつてない事だ」と言うほどです。つまりとても良い状態で、日本茶製造が出来ています。

 

果樹や植木では、枝を切る作業を剪定とよんでいますが、茶業界ではこの剪定を整枝(せいし)とよんでいます。

 

毎年当茶園では、高級な1番茶しか製造しないため、1番茶製造後に茶の木を深く整枝します。そして、7月に入り新たに伸びてきた2番茶を浅めに整枝します。時期が来ればこの作業の繰り返しです。この長年の作業や概念に、何の疑問もありませんでした。

 

その後、翌年の5月、待ちに待った茶摘みが始まります。毎年初日の新茶の茶摘みをし、製造をする・・・最初は色が悪く、味もイマイチで悩みます。毎日少量茶摘みしては、色や味ののりを確かめながら、各種の調整を繰り返して製造をします。そのうち、春の気候とともに一気に新芽が伸びてしまい、高級茶だけの生産のはずが中級茶も出来てしまう現実がありました。

 

ところが今年は違います。その理由は数度に渡る整枝の技にありました。

 

昨春の新茶後の整枝の位置を、大きく変えてみたのです。いままでの概念になかった方法を、思い切って試してみたのです。一般的な生産の常識から外れていましたので、とても勇気が必要でしたが何事も挑戦です。実はイマまでの軸足を180度転換した、真逆の方法だったのです。

 

その結果が、今年の新芽に現れました!!

 

果樹は、剪定の時期や位置を間違うと収穫量が減ったり、味の良い実が成らないことがあると聞きます。それだけ、剪定に関しては真剣だと言えます。ところが、一般的に茶農家が茶の木の整枝に関心が薄い原因は、整枝の位置の違いにかかわらず、5月になれば新芽が出て茶摘みが出来るからです。

 

また果樹はそのまま実を食するので、味の善し悪しがダイレクトに出てしまいます。一方お茶は、生の葉をそのまま食するわけではなく、工場で蒸して、揉んで、乾かすという2次加工が入ります。

 

そのため、茶摘みをした新芽がいくら良質であっても、製造で失敗するとその良さは生かせません。つまり良い新芽を腕の良い職人が製造することで、最も美味しい日本茶が生まれるのです。

 

当茶園では、自社茶園で栽培された良質な新芽のみを、創業者増田伊之助の手もみの技術を継承し、現在もその心を忘れず絶やさずと意識し続けています。究極のシングルオリジンと自ら掲げ、それは安心・安全そして品質・味など、総合的に皆様に認められて成り立つコトとして、伝統と革新のどちらも大切に、日本茶を守り各種の挑戦を続けて行きたいと思っております。